◎「男は仕事・女は家事」の常識?
1960年代以降、高度成長期を迎えたわが国では、男は多少辛くても家族のために長時間の賃労働をし、女は家で出産・育児・家事労働をこなし夫の無理な仕事を支えるといった「性別役割分業」を社会的要求の高まりでつくり出しました。
これは1人の無給労働者(女)と1人の有給労働者(男)をセットにすることで低賃金の効率の良い労働力を可能にするきわめて合理的な制度でした。男性は家族給として妻・子供の分の給料をもらい、女性は男性の分の掃除・洗濯食事の支度など一切の家事労働を引き受けるといったシステムをつくり出しました。
同時に、これは結果的に男性に経済力を、女性から経済的自立を奪い、男女の性差を生み出すものでした。このつくられた性差を「ジェンダー」といいます。
男性・女性ともに暮らしやすい住宅を考えるときに、まずはこの「ジェンダー」の存在を知り、その規範にとらわれ過ぎていたこれまでの住宅を見直すことが大切です。
◎「ジェンダー」で見えるキッチンの欠点
住宅の中で、ジェンダーがもっとも顕著に表れているのがキッチンです。現代のようなダイニングキッチンは、戦後、封建的・非民主的なものが追放される流れの中で日本で最初の第1号女性一級建築士「浜口ミホ」によって提唱されたものでした。戦後まだ台所と食堂が分離していた頃に、著書「日本の住宅の封建制」のなかで、「主婦は武士階級のころの召使の代わりとして出現した」と言っているのです。
そして主人家族ではなく平等家族であるなら、料理と食事が同じ空間で行われるのが自然だと提唱した「台所と食堂の融合」がダイニングキッチンなのです。
こうして彼女は公団住宅からの依頼を受けダイニングキッチンの基本設計を行い、ステンレスの流し台が大量に設置され日本の社会に急速に浸透していきました。この時から約50年、台所は基本的に何も変わっていません。 |