みんなで作ってみんなで食べるために

◎最近のメーカーのシステムキッチン

最近のメーカーのシステムキッチンは進化を遂げ、機能性や色、素材まで各種バリエーションも増え、つくづく良い時代になったとおもいます。

今から10数年前の頃は、まだブロックキッチン全盛時代。システムキッチンがまだめずらしい時代でした。当然システムキッチンは高価であり、同じ金額で充分オーダーが可能な時代でもあったのです。サンウェーブ社の「サンヴァリエ」はシステムキッチンのさきがけといわれその後「ララ」「ラヴィータ」「センテナリオ」…TVでおなじみのクリナップ「クリンレディ」…確かに現在のキッチンは美しく、女性1人で調理作業するには、これ以上ないほど改良しつくされました。しかし、キッチンは結局女性1人が作業する場所として、何も変わっていないのです。

キッチンは1人で効率よく作業できる動線計画でつくられ、左右に少し動くだけで調理できますが、2、3人で調理すると動線が重なりぶつかり合ってしまいます。つまり、夫と妻・子供などで家族みんなが調理することが困難なのです。

家族のうち誰か1人が調理にあたることになれば、現在の「ジェンダー規範」では、女性にこの役割を押し付けることになります。TVコマーシャルのような「家は女の城になった」印象ではなく、家事労働を当然のようにおしつける家が「女の城」であるはずがありません。

◎複数で作業するのに適したアイランドキッチン


最近DINKS・DEWKSを主な消費者層として「アイランドキッチン」が注目されています。今までのような「私つくる人・あなた食べる人」という役割分担を強制しない、多人数で調理するのに適した応用のきく画期的な提案です。

「アイランド型」は以前からあるキッチンの形態ですが、これがなかなか浸透しません。その理由は3つのことが考えられます。第1に「スペース」の問題。第2に消費者が受身であること。メーカーのキッチンのほとんどは従来型で、それをメディアで大々的にPRしています。消費者は「アイランド」の存在も知らず、選択のチャンスが少ないこと。第3に社会にまだ「みんなで作ってみんなで食べよう」という意識改革がおこっていないことがあげられます。