◎常識も疑って確かめてみる
便利だからといって、部分的にとらえて設計すると危険です。寸法も同様です。「ここは○○mm」と決めつけた設計するとおかしなことになる場合もあります。
例えばU列型キッチンの場合は、2つの調理台の間隔を650〜800mmぐらいにします。「キッチンスペシャリストハンドブック」には1200mmは取りましょうとありますが。1200mmだと切った材料をつかんで1〜2歩歩いて鍋に入れる感覚。下にぽたぽた落ちますし。
しかし、U列型が作業しやすいからといって、例えば独立型キッチンでそれをやったら「こんなうっとうしいところに入りたくない」という空間になる心配があります。ちょうどバリアフリーの寸法でハンドブックどおりに設置した手摺が機能しない高さだった…とう現象に似ています。現場や使う方によってふさわしい寸法が違うということがあります。ですから「この数字が一番」と言い切ると危険なんです。常に全体の中で考え場合によっては体で確かめておくのも大切だと考えます。
◎キッチンの3つのポイント
使いやすく片付けやすいキッチンのポイントは3つあります。「スペース割り」「収納計画」「器具類の選び方」です。
◎「スペース割り」は、食材の野菜を買ってきたとします。まずは材料を「ポン」と置くことから始まるわけですが、次に「ジャブジャブ」と洗い、「トントン」と食材をカットして、「ジュージュー」と炒める。最後に「ハイ」と配膳するわけです。
こんな手順がスムーズに行えるスペースと、適当な寸法を確保されていることがポイントとなります。こんな「ポン、ジャブジャブ、トントン、ジュージュー、ハイゼン」の「スペース割り」がきちんとでき、野菜炒めができたら合格です。
◎二つ目は「収納計画」です。歩かなくても、ほしいところにほしいものが取り出しやすく、しまいやすくなっているか?サッと料理、サッと片付けを前提にすると「ポン、ジャブ、トン、ジュー、ハイ」のスペースを確保して、なおかつムダな一歩がない。
そして必要な物が必要なところに、取り出しやすくしまいやすくが基本になります。例えば食洗器がシンクと熱源の間に入っていることが多いんですが、「引き出し」と「調味料入れ」があると便利。「フライ返し」や「お玉」もあると便利でしょう。
また、「収納」で考え直さないといけないのが日本人の「収納妄想」。キッチンにある物の多さは、日本が世界一といわれています。入るところがないのに無理に「収納」を作る。また物を買いこんでしまう。売る側も「奥さん、こんなに大きな収納があるから便利ですよ」とすすめ、大きな収納のため、奥が深く入ったら最後、出てこない「死蔵品」がどんどん増える…ですから収納が多い、大きいということは、本当にいいこととは考えません。それなら、奥行きの浅い、前にも重ねない、一段一列収納の方が、よほど使いやすいのです。
また、基本的には吊戸棚もそんなに数多くなくてもよいと考えます。雑誌に載るような、収納テクニックよりも生活に必要な基本的な物でごくシンプルに、軽く暮らすってことを考えていくほうがいいような気がします。
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