海外リモデル事情
米国編       ドイツ編 2007米国編   
Street of Dreams 2007 (住宅展示会・ウッディンヴィル)レポート・2007年7月
Street of Dreams 2006 (住宅展示会・サマーミッシュ高原)レポート・2006年7月

Mr.Roger Willimas Residence(建築家のリフォーム・シアトル)レポート・2005年9月
Street of Dreams 2005 (住宅展示会・ノーランウッズ)レポート・2005年7月
Lowes & Homedepot (ローズ&ホームデポ・ロスアンゼルス)レポート・2005年3月
レポート:アメリカのリフォーム市場(1)   輸入建材ならシアトル・インテラ
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アメリカの住宅市場
アメリカのリモデリング市場について見る前に、アメリカの住宅市場全般について簡単に見ておきたいと思います。

新築、中古住宅市場
アメリカと日本の住宅市場は、それぞれ先進国中第一位と第二位の規模を持っています。1990年代半ばまでは日米の住宅着工数はほぼ同数でした。例えば、1995年の住宅着工数は、日本の147万戸に対してアメリカは135万戸で、住宅着工数の単純比較では、日本の方が多いという年も珍しくありませんでした。しかし、ここ5年ほどのアメリカの住宅着工数の増加は驚異的で、2004年には200万戸に迫る水準に達しています。これは、1978年以来の高水準で、アメリカ住宅産業の歴史の中でも極めて高水準なものです。
さらに、アメリカの住宅着工は、80%以上が一戸建てです。共同建ても、デュープレックスと呼ばれる、実質上は一戸建てとほぼ同じ住宅が数多くあります。このような点を考慮すると、アメリカの住宅市場は日本の2倍以上の規模があると言っても差し支えないでしょう。
日米住宅市場のもう一つの大きな差は、中古住宅市場の規模です。2004年のアメリカでの中古住宅販売数は、一戸建てだけで約600万戸、新築住宅市場の約3倍の規模があります。日本では正確な統計はないようですが、20万戸未満と考えられていますので、中古住宅市場の規模は、日米で30倍以上の開きがあることになります。リモデリングは、中古住宅の購入時に行なわれることが多く、この中古住宅市場の規模の差は、日米のリモデリング市場の規模の差に大きな影響を与えていると言えるでしょう。

日米の相違
住宅市場の規模以外にも、日米では様々な点で相違があり、そのいくつかはリモデリング市場を考える場合に重要な意味を持っています。
まず、アメリカでは、工法が日本でツーバイフォー工法と呼ばれる枠組み壁工法にほとんど統一されていることです。工法が統一されていることが、リモデリングを技術的に容易にしている側面があります。
次に、アメリカでは注文住宅は極めて少なく、建売住宅がほとんどです。建売住宅は、間取りなどに家主の個性が少なく、汎用性のあるデザインの住宅がほとんどです。従って、中古住宅市場での販売がしやすくなっています。
アメリカでは、数年に一度の住み替えが一般的で、リモデリングは、住宅価値を維持し販売する時に少しでも高く売るための一種の投資と考えられています。従って、中古住宅市場で販売しやすくするために、デザインに個性の少ない汎用性の高いデザインが多いという側面もあると思います。
また、アメリカでは、建築時の検査(インスペクション)が大変厳しく、欠陥住宅が少ないという点もリモデリングを活発にしていると言えるかもしれません。
住宅の基本的な性能についての不安が少ないので、中古住宅になっても比較的安心して売買でき、中古住宅をリモデリングすることに抵抗が少ないようです。
レポート:アメリカのリフォーム市場(2)    
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アメリカのリモデリング市場規模
2003年に約2,330億ドル(1ドル100円換算で約23兆3千億円)と推計されています。これは、アメリカの住宅産業全体の40%、アメリカ経済全体の2%以上に相当する規模で、アメリカ経済にとって大変重要な産業であると認識されています。日本のリフォーム市場規模は、およそ7兆円と推計されています。単純な比較はできませんが、アメリカのリモデリング市場規模は、日本のおおよそ3倍と言って良いでしょう。
アメリカのリモデリング市場は、1990年代の初めから成長を持続しています。市場規模は、1995年の約1,530億ドルから、2003年には約2,330億ドルに52%増加しました。このような成長の背景には、1)住宅価格の急激な上昇、2)歴史的な低金利、3)他の魅力的な投資案件の欠如という3つの条件があります。つまり、持ち家所有者がモーゲージ(住宅ローン)を低金利のものに借り換え、それによって生じた資金余力を、株式などの他の投資案件ではなく、価格上昇が期待できる持ち家のリモデリングに振り向けたものということです。

リモデリング支出の内訳
アメリカのリモデリング市場規模2,330億ドルのうち、約75%の1,760億ドルが持ち家のリモデリングに対する支出であり、残りの約25%、570億ドルが賃貸住宅のリモデリングに対する支出です。
さらに、持ち家に対するリモデリング支出1,760億ドルの約22%のあたる379億ドルが住宅の維持、修理に支出されています。残りの約78%、1,381億ドルが単なるメンテナンスを超えた、「積極的リモデリング」への支出です。「積極的リモデリング」をさらに細かく見ていくと、その43%が部屋の増築などの構造的リモデリング、28%がエクステリア、インテリアの更新、11%が設備機器等の更新になっています。
レポート:アメリカのリフォーム市場(3)    
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リモデリング市場の特徴
それではここで、アメリカのリモデリング市場のいくつかの特徴を見ておきたいと思います。

中小企業が多い
新築住宅市場では、トップ10のビルダー(工務店)が、新築住宅販売の20%以上を占めている(2003年)のに対して、リモデリング市場では、トップ10のリモデラー(リモデリング業者)のシェアはわずか1%に過ぎません。トップ500社まで範囲を広げても4%以下です。

専門化の進行
近年、アメリカではリモデラーが提供するリモデリングの内容の専門化が進んでいます。全米のリモデラー、トップ100社のうち、4分の1が幅広いリモデリングを手がけているに過ぎず、その他は、ある特定分野のリモデリングに特化しています。具体的には、窓・サイディング・屋根の取替え、デッキとパティオの増設を専門にする業者が多いようです。また、約10%の業者が、高級住宅の大規模なリモデリング向けデザイン、サービスに特化している点が、最近の特徴として注目されます。

高額のリモデリングの増加
長期にわたる好景気を背景に、高額所得者層で収入の増加が著しくなっています。そのため、高所得の持ち家所有者が部屋の増築、キッチン・バスの改築など、大規模で高額なリモデリングを積極的に行なっています。1万ドル以上のキッチンの改装と、5千ドル以上のバスの改装の合計は、1995年の75万件から2003年には130万件に75%も増加しています。このような高額のリモデリングが、アメリカのリモデリング市場全体を牽引している側面があります。
アメリカの高所得層にとって、リモデリングは投資という側面を強く持っています。日本と異なり、住宅の住み替えが一般的で、中古住宅販売市場の発達したアメリカでは、持ち家と言えども将来販売するケースが数多くあります。従って、リモデリングにより住宅を少しでも高く売りたいと考えることは自然なことです。高所得者が多く住む一等地にある住宅は、築年数の長いものが多く、居住性の点で見劣りする場合が多くあります。従って、リモデリングによる居住性の改善は、住宅価格上昇につながりやすいのです。実際、増築のために支出した金額の83%は、住宅価格の上昇という形で回収されています。

D・I・Y         ホームデポ店内
アメリカでは、DIY(Do-It-Yourself)が極めて盛んです。2003年のDIY支出の合計金額は371億ドルでリモデリング市場全体の27%を占めいます。この数字には、人件費などが含まれていませんので、DIY市場の重要性はこの数字以上と考えられています。このような重要な市場を狙って、ホームセンターなどが、DIY教室を開催したり、工具の貸し出しを行なったりして、市場を積極的に開拓しています。
もっとも、高額住宅の所有者は、DIYよりもリモデラーに依頼する傾向が強いようです。2003年に高額住宅の所有者がリモデリングに支出した400億ドルのうち、341億ドルがリモデラーへのものであり、DIYのシェアは15%に過ぎません。
レポート:アメリカのリフォーム市場(4)    
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建材の流通
建材の流通のうち、リモデリング用と考えられるものは年間3,250億ドルと推計されています。現在、リモデルと新築の両方を含めた建材の流通市場は変化の過程にあります。
かつては、建材の卸業者が工務店、リモデラーなどのプロ向けに供給するルートと、ホームセンターがDIY市場、つまり一般消費者に供給するルートに分かれていました。しかし、このような区分は当てはまらなくなってきました。
現在、プロ向けの供給業者の企業合併が進行しています。また、彼らの中心的な顧客である工務店も合併が進行しています。そのため、より大規模なプロ向け供給業者が、より大規模な工務店への販売を行うという状況に移行しつつあります。その一方で、プロ向け供給業者の小規模なリモデラーに対する売上は、1997年には売上全体の24%であったものが、2002年には18%に低下しています。
プロ向け供給業者のリモデラーに対する売上が減少しているのとは逆に、ホームセンターがリモデラーを顧客として取り込んでいます。ホームセンターのリモデラーへの売上は、1997年から2002年の間に、全体の売上の11%から14%に上昇しています。
このように、リモデリング用建材の流通は、プロ向け供給業者からホームセンターに移行してきています。このような市場の変化に対応して、プロ向け供給業者、ホームセンターともに新しいサービスの提供を始めています。
プロ向け供給業者は、工務店、特に大規模工務店へのサービスとして、事前の組み立て(プレハブ)サービス、現場での施工サービスに力をいれています。既に収益の15%が事前の組み立てサービス、3%が現場での施工サービスからのものになっています。
一方、ホームセンターは、付加価値サービスとして、デザインや商品選択に関するアドバイス、見積もりサービス、翌日配送サービスなどを提供しています。なお、ホームセンターについては、ホーム・デポとローズの2社による市場の寡占化が進行しています。特に、日本でも有名なホーム・デポは、アメリカの小売業として最も成功している企業の一つと言われています。
5)レポート:アメリカのリフォーム市場(5)    
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アメリカのリモデリング市場の今後
アメリカのリモデリング市場の現在のような高い成長は、今後も続くのでしょうか。ハーバード大学のレポートは、成長は継続すると予想しています。
その第一の根拠として、持ち家比率の上昇があります。リモデリングへの支出は、賃貸住宅よりも持ち家の方が高く、持ち家比率の上昇は、リモデリング支出を増加させると考えられています。持ち家比率は、1993年の64%から68%に上昇しており、この増加傾向は今後10年続くと考えられています。
第二の根拠としては、平均築年数の増加があります。アメリカには、約1億2千万戸の住宅ストックがあり、その平均築年数は32年です。この平均築年数が増加しており、住宅の維持改良のための必要性が増すものと考えられています。
今後の成長を脅かすものとしては、住宅価格の急落、モーゲージ金利の急上昇が考えられます。しかし、高所得層の所得増加率は高く、また、全米のほとんどの地域で住宅価格は上昇を維持しています。従って、今後、よほどの経済的ショックがない限り、リモデリング市場は、1995年以降の平均成長率である3%の成長を維持し続けると強気の予想がなされています。
課題としては、リモデリング市場の成長を支えてきたベビーブーマーより下の世代、その中でも移民などのマイノリティーに積極的にアピールすることが重要になってくると指摘しています。
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